バイク狂?

バババババ…

商店街から高台へ続く細い坂道を、一台のバイクが走って行く。獣道と言っても過言ではないほどに
険しい道だ。しゃべりながら乗っていたら舌を噛むくらいの揺れが断続的に続いている。

『どうにかならないの?』
『この道を抜けるまでの当分は無理でしょうね』
『詩子さんは止められないの?』
『無理です。一度バイクに乗った詩子は、目的地に着くまで止められません』

目を潤ませながら必死に訴えてくる澪に、筆談で答える茜。確かに詩子は夢中でバイクを運転していて、
とても周りの言うことなど聞いてくれそうに無かった。
こういう時に、筆談は便利だ。
さっきからこういうやりとりをしている二人であったが、しかし、これには一つ欠点があった。

『う…さっきからずっと字を見てたから気持ち悪いです』
『わたしもなの…』

バイク揺れに酔うことであった。これはきつい。
これに次ぐ問題としては、バイクが出す騒音で鬼を呼んでしまう恐れがあることだった。
鬼が集まりつつあった商店街から運良く逃げ出すことができたのだから、
さすがに志半ばで鬼にはなりたくない。
鬼が出てきたところで振り切ってしまえばいいという意見もあろうが、さすがは葉鍵鬼ごっこ。
人外の連中が多いこともあってバイクなどでは到底太刀打ちできないのが現状である。
まあ、そんな連中に会ったら奇跡でも起きない限り逃げおおせることができないわけだが。

『この坂道を過ぎれば…平坦な道になると思います。それまでの辛抱です』
『…結構辛いの』
『…我慢です、澪』

二人にしてみればかなり切実な話をしているとき、唐突に詩子が声を上げた。

「ああっ!!…うぐっ!」

ついでに舌も噛んでくれたようだ。
茜が詩子に『どうかしましたか?』と澪のスケブに書いていると、急にバイクの速度が下がり始めた。
最後にパスッ…という情けない音を出して、バイクは完全に停止した。

「どうかしたんですか?詩子」

もう筆談する必要がなくなったので、口に出して茜は言った。
詩子は少しの間口元に手をやって転げ回っていたが、なんとか起き上がった。

「どうしたのですか?…舌を噛んだのはわかりましたが」
「あ、あのね〜、ガソリンが…無くなっちゃった」

てへっ、と気不味そうに笑う詩子。あっけにとられる茜と澪。

「…仕方ありませんね」
「ごめんね〜…早めに気が付いてればよかったよ〜…」
『こんなところにいたら、鬼に捕まっちゃうの。早く隠れるの』
「いいですよ詩子。とりあえずこの森の中に入りましょう。丁度良く高い草が生えてますし」
「そだね。こんなに高かったら絶対見つからないね」

そして草の中に巧妙にバイクを隠した後、茜一行は草の生い茂る森へと入っていった。


【茜 澪 詩子 オートバイで脱出なるも、高台手前でガス欠】
【バイクの燃料 無】
【時間 昼前】

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